
私が汎用コンピュータSEをしていた1980年代初頭に、活躍していた汎用コンピュータ、たとえばIBM System/370 Model 168は、当時の最先端技術の結晶だった。大型冷蔵庫ほどの筐体に、数十メガバイトの磁気ディスク、数メガバイトのメモリ、そして数百万命令/秒(MIPS)級の処理能力を持つCPUが搭載され、金融、政府機関、科学技術分野などで用いられていた。しかしその導入には、専用の空調設備、床の補強、専門のオペレーターなど、多大なコストとインフラが必要で、コンピュータ部屋は冷蔵庫に入っている状態だった。
一方で、2024年に発売されたiPhone 16 Proは、わずか200グラム前後の手のひらサイズのデバイスに、20億個以上のトランジスタを持つ高性能チップ(A18 Pro)を搭載し、数兆命令/秒(TOPS級)の処理を可能としている。メモリは8GB、ストレージは最大1TBに達し、処理速度・容量ともに1980年代の汎用機を何百万倍も凌駕する。しかもこれらの性能を、わずか数ワットの電力で実現しているから驚きの世界だ!(これは私の感覚)
通信や入出力も大きく進化しました。System/370はパンチカードやラインプリンタ、専用端末を使ってデータを入出力していましたが、iPhoneはマルチタッチスクリーン、Face ID、5G通信、Wi-Fi 6Eなどを使って、直感的かつ高速な操作が可能だ。今や、映像編集、音声認識、AIによる画像解析といった、かつてはスパコンレベルの作業すらスマートフォンでリアルタイムにこなせる時代となった。
総じて言えば、iPhone 16 Proは、かつて数千万円~数億円規模のコンピュータと専用施設を必要としていた機能を、個人が気軽に持ち歩けるかたちで提供している。これは単なる技術の進化にとどまらず、情報へのアクセスの在り方や、社会全体の働き方、生活の質にまで大きな影響を及ぼしている。スマートフォンは、かつての「スーパーコンピュータ」を日常の道具へと変えてしまっている。




コメント